2015.8.30

住宅ローンの繰り上げ返済に潜む罠

1.繰り上げ返済の効果

繰り上げ返済を考えている方の多くは利息がもったいない!早く返したい!このように考えている方が多いのではないでしょうか。
例えば35年ローンで全期間固定金利2%、3,000万円の物件を購入と仮定します。利息を含めると総額約4,173万円の住宅ローン返済になるのですが、10年目に300万円を繰り上げ返済すると(期間短縮型の場合)・・・総額4,001万円。なんと172万円もの利息の削減になります。
このように繰り上げ返済には大きな効果があるので、コツコツお金を貯めては繰り上げ返済に・・・という方が多くいらっしゃいます。しかし、せっかくの繰り上げ返済もやり方を1歩間違えると思わぬ落とし穴に落ちてしまうこともあるのです。繰り上げ返済を最大限有効に行うためには何に気をつけるべきなのか、次の章で詳しくお伝えします。

2.繰り上げ返済に潜む落とし穴

(1)教育費
まずは、教育費です。繰り上げ返済を考えていらっしゃる方の中には、お子様が小さいうちにできるだけ貯蓄をし、繰り上げ返済に回した後にお金がかかる高校、大学に備えようというお考えの方もいらっしゃると思います。このような考えはごもっともです。早くローンを返したい、利息がもったいないというお気持ちが強い方ほどこのような繰り上げ返済の計画をしているように感じます。
実際、普通預金に数百万円単位でお金が貯まっているともったいないから早く返済しようと誰もが考えます。しかし、本当にそれでいいのでしょうか。お子様が小さい時はお金の貯めどきですが、そのお金は繰り上げ返済ではなくお子様の教育費のために貯めるべきです。
特に大学の費用は私立で700万円、国公立でも500万円はかかります。子供が二人の場合はその倍かかります。仮に学資保険等で二人に200万円ずつ貯めていてもまだまだ不足するということです。ましてや学資保険等の貯蓄はやらずに銀行預金のみという場合、一見お金がありそうに見えてもそれは将来必ず出て行くお金。もったいないだけで繰り上げ返済してしまうと学費のピク時に全然足りないという結果になります。
一度返してしまった繰り上げ返済は二度と戻してはくれないのです。お金が足りないために教育ローンや奨学金を借りる、なんてことになるとせっかくの繰り上げ返済が台無しになってしまいます。
(2)老後
二つ目は老後です。貯蓄や退職金で若いころには無かったまとまったお金ができたからといって有頂天になって残りの住宅ローン一気に完済してしまおうと考えるのは珍しい事ではありません。しかし、そうすると一気に苦しくなってしまう落とし穴があるのです。
今、年金は65歳からの支給になっています。定年退職が60歳の場合5年間は無収入になります。月々の生活費が25万円の場合、5年間で1500万円の支出になりますから、もし、定年時に一気に住宅ローンを完済したあとに、預金残高が1500万円未満ですと、預金が底をついてしまいます。
特に年齢が高くなってからローンを組んだ方にこういう傾向がみられます。ということは、定年後に子供の教育資金支払いのピークが重なってきます。そうなると、月々の生活費以上に出費が訪れることになるでしょう。やっかいなもので、そんな時に限って大きな病気などがやってきたりするのが世の常です。
お子様が小さいときは教育費の貯め時だとご説明しましたが、お子様が独立してから老後までは老後資金の貯め時です。こちらも教育資金と同様、繰り上げ返済を頑張りすぎてしまうといざ老後に差し掛かった時には手元に資金がない、という可能性があります。
もっと言うと、老後の繰り上げ返済は利息削減効果がほとんどありません。若いころと月々の返済額は変わらないのですが、残高は相当減って来ていますので、月々の返済額に占める利息部分が驚くほど少なくなっているからです。
完済すれば月々の返済がなくなってスッキリする。非常に魅力的に見えるのですが、利息削減効果が見込めないうえに、預金が底をつくリスクを抱えています。一括返済すべきかどうかは各家庭のライフプランによって異なって来ますから、全ての人が一括で完済すべきではないというのではありません。セカンドライフのライフプランニングを行うなどして、安全を確かめてから繰り上げ返済するようにしたいものです。
(3)思わぬ出費
教育費と老後資金はある程度予測がつくかもしれませんが、病気や介護などの想定外の出費まで考えて繰り上げ返済を行う必要があります。
例えばガンになって仕事を辞めてしまったら・・・例えば交通事故に合い、介護になってしまったら・・・収入は入ってこない、治療費は増える、住宅ローンは払い続けないといけない、子どもの教育費は変わらない・・・
実は、医療費というものは健康保険のおかげで自己負担はほとんど生じないと言ってもいいくらい日本の医療制度は優れています。しかし、働けないほどの大病や障害を負ってしまったらどうでしょうか。この場合も手当や年金で賄える仕組みがあるにはあるのですが、こちらは相当の自己負担を覚悟しなければいけません。
特に年収の高い人ほどダメージは大きくなります。また自営業者の場合は国からの手当(具体的には傷病手当金)は支給されませんので、事業が継続できないというとんでもない事態になりかねません。ですから、教育資金のような必ず出て行くお金の他にいざという時の出費にも備えておかなければならないのです。
こういう話をすると生命保険に入っているから大丈夫という声が聞こえてきそうです。しかし、就業不能になった時に本当に役に立つ保険になっているでしょうか。例えばがん保険に入っているからがんになっても大丈夫と思う方が少なくありません。しかし、がん保険は治療費は賄ってくれますが、就業不能による収入の減少までは賄ってくれないのです。
こんな状況になってしまったとすると繰り上げ返済をせずに手元にお金を置いておけばよかった、ということになります。一度繰り上げ返済したお金はもう戻ってきません。

3.繰り上げ返済以外の方法

(1)運用
繰り上げ返済以外の方法ですが、まずは運用です。繰り上げ返済のオトクとは少し意味合いが違うかもしれませんが、冒頭に記載した300万円の繰り上げ返済を行わずに運用したとすると172万円以上の運用益が出るかもしれません。しかし、運用益が出ればよいですが、損を出してしまう可能性もあるので運用の手段については吟味する必要があります。
(2)借り換え
次に借り換えです。今の金利よりも高い金利で借りた方だと、大きく借り換えの効果が出る可能性があります。目安とされているのは残りのローンの期間が10年間・残債1,000万円、金利差1%です。この目安を離れてしまうと、借り換えの際の手数料で借り換えのメリットを享受できないケースがあるからです。
借り換えを行う際には、どのくらいの費用がかかり本当にメリットがでるのかどうかシミュレーションをしてみましょう。また、繰り上げ返済のメリットは利息削減以外にもあります。それは住宅ローンの返済期間を延ばすこと。期間を延ばすことによって月々の返済額が減少するので、キャッシュフローに余裕が生まれ、無理に繰り上げ返済するより効果の実感としては大きくなるかもしれません。
(3)保険の見直し
最後に保険の見直しですが、こちらは繰り上げ返済の如何に関わらず行った方がよいでしょう。以前保険に加入してからライフプランの変化はありませんか。(お子様が独立した・働き方に変化があった・貯蓄が増えた、など)ご加入した際にはその時点での最適な保険を加入したはずですが、ライフプランに変化があれば必要な保障は変わってきます。
もしかすると必要以上の保険料を払っているかもしれません。その分を繰り上げ返済や運用に回してはいかかでしょうか。このタイミングで一度保険の見直しをオススメします。

4.いつどのくらいの金額を繰り上げ返済すればよいのか

実は繰り上げ返済のベストのタイミミングというのはありません。いつでも良いのです。しかし、今まで述べて来たようなリスクもあるので、むやみにやってしまうのも非常に危険です。別の言い方をすると人によって繰り上げ返済のやり時はみんな異なるということです。
(1)ライフプランの観点からみたタイミング
ライフプランが一人一人違う訳ですから、一概にお金が貯まっている時がいいとは言い切れません。逆に預金の額が一見少ないように見えてもキャッシュフロー(収支)が十分にあってかつ、将来への大きな出費への備えができている、こんな時はすぐにでも繰り上げ返済ですね。
できれば、ライフプランニングを実施して、生涯のキャッシュフロー表を作成してベストなタイミングや金額をはじき出したいものです。そうすれば、リスクを回避しつつ、最大の繰り上げ返済効果を上げることができます。
(2)節税の観点からみたタイミング
節税観点から繰り上げ返済をしない方がいい時期があります。それは住宅ローン控除による節税メリットが十分に享受できている場合です。どういう場合か詳しい解説は別の機会に譲りますが、こういったケースにおいては、住宅ローン控除が終了した時が繰り上げ返済のタイミングとなるでしょう。

5.まとめ

ここまで繰り上げ返済の効果や落とし穴、繰り上げ返済以外の方法などについて述べてきました。繰り上げ返済は利息の削減や返済期間の短縮・延長などができるため非常に魅力的な手段です。しかし今後のライフプランを考えて繰り上げ返済を行わないと思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。シミュレーション(ライフプランニング)を行ったうえで、一番効果のある方法やタイミングを選びましょう。

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