2017.6.10

配偶者は相続税がかからない?

1.配偶者控除を上手に使わないと…

(1)配偶者控除の仕組みとは
財産を遺して人が亡くなった場合、その配偶者には相続税の税負担を減らす配偶者控除があります。これは配偶者だけが認められる特例で大きな額の控除(所得から引くこと)を受けることができます。

その控除枠は1億6000万円もしくは配偶者の法定相続分のうち、どちらか高額な方が「非課税」となります。

例えば、被相続人(財産を遺して亡くなった人)の遺産が4億円あった場合は、法定相続人が妻1人、子供2人の場合、基礎控除(4800万円)を受けたあとの金額は3億5200万円となり、妻は法定相続分(1/2)の1億7600万円、配偶者控除を使うことができます。

被相続人の遺言で「財産のすべては配偶者のものとする」という記述があった場合、遺言通り財産はすべて配偶者にわたります。税控除分はまず、法定相続人(3人)を考慮して均等に課税分を計算します。(4億円-基礎控除4800万円=3億5200万円、3億5200万円の1/2である1億7600万円が課税対象)そのうち、1億7600万円分は非課税。残りの1億7600万円に対してのみ、相続税がかけられます。

(2)配偶者控除のポイントと注意点
今まで一緒に人生を歩み財産を築いてきた配偶者にとって、とてもいい制度であることは間違いありません。基礎控除以上に控除枠が大きいからです。この制度は一次相続(夫婦のどちらか片方が初めて亡くなる相続)に限って使われる特例となります。

ただし注意点があり、この配偶者控除制度を最大限に活用することで、遺産分割の方法によっては二次相続(夫婦の片方がすでに亡くなっている状態で発生する相続)まで含めた「相続税額の総額」が多くなってしまうことがあります。次に具体的事例をあげながら解説していきます。

2.配偶者控除をうまく活用する方法

(1)有効活用と思われる例
まず、遺産分割において法定相続通りに行う場合は、配偶者控除を使うと有効になります。例えば、被相続人の遺産が先ほどの半分の2億円で、家族構成は同じ妻1人子2人という場合に発生する相続税のケースを考えてみましょう。

一次相続では基礎控除分が4800万円(3000万円+法定相続人×600万円)で課税対象が1億5800万円、法定相続通りに分割すると妻には7900万円が課税対象となりますが配偶者控除を使って非課税。子供たち2人はそれぞれ3950万円が課税対象となります。子供たち全体では7900万円です。

ここからが2次相続の話になります。相続が発生する前は2億円あった財産ですが、すでに一次相続で1/2の遺産を受け取っているので、二次相続で受け継ぐ相続は1億円です。基礎控除は4200万円になりますから、課税対象はそれぞれ2900万円となります。子供たち全体で5800万円です。

一次相続と二次相続あわせた課税対象総額は1億3700万円です。この数字を覚えておいてください。

(2)控除を最大限活用しているのに相続税が減らないケース
このケースはよくあるケースです。「亡くなったご主人様の遺産が基礎控除を引くと、1億6000万円以内になりますから配偶者控除を使って、一次相続ではすべて奥様が受け取って、相続税がかからないようにしましょう。今度ご自分が亡くなるときまで相続税は発生しませんから」というとてもありがたい助言のように思われます。

しかし、よく考えてみると一次相続、二次相続の課税対象金額が増えていることに気づきます。一次相続では、確かに相続税はかかりません。しかし、二次相続では全額相続した配偶者の遺産2億円に対して相続税を計算することになります。

つまり、二次相続では基礎控除分(4200万円)を差し引くと、1億5800万円に対して相続税がかかることになります。先ほどの法定相続通りに相続した場合(1億3700万円)よりも2100万円課税対象額が増えています。

この場合、一次相続の時に全額妻が遺産を相続するのではなく、子供にも相続しておくことで効率的な「相続税対策」ができます。事実、最終的には子供がいる場合、遺産は子供に行くことになります。また、残された配偶者もその後の生活費などに遺産分をあてますが、それほど多くの遺産を必要とするわけではないことが多いように思われます。

(3)あなたの場合はどのように相続税対策をするのが有効なのか

配偶者控除はこれまで財産を一緒に築いてきた配偶者に考慮して、とても有利な特例と言えます。それを上手に使って、効率的に家族にかかる「相続税課税」を軽減できる方法がありますので、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみるのもよいと思います。相続はどの家庭もすべて同じパターンというのはありません。

家を持っているか、持っていないか、同居か同居でないか、賃貸物件を持っているのか、それとも株式や投資信託などの有価証券が多いのか、子供がいるのかいないのかで有効な相続税対策はみな違います。

あなたが希望する相続の仕方や家族が「争族」にならないように、事前に現在の資産について、分割方法を決めておくというのもとても大切なことです。先延ばしにしがちな相続対策ですが先延ばしすればするほど、面倒なことや余計な出費が増えていきます。

相続対策は、相続税がかかる人だけと一般的に誤解されがちですが、実は税金がかからない方にとっても対策は非常に大切なことです。是非、ご自身の家庭は関係なしと思わず、まずは何を対策すべきなのか、相談してみてください。

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