2015.8.30

相続税の基礎控除引き下げで大幅増税に

1.課税対象者が2倍に増える理由はこれだ!

平成27年1月から相続税が大幅な増税となりました。今まで税金を納めなくても良かった人が納税対象者になってしまう可能性があります。どの様な方が新たな相続税の課税対象者になるのか、どんな具体策を導入すべきか踏み込んで行きたいと思います。
日本の課税制度には(所得税や相続税などの直接税の場合)「基礎控除」と呼ばれる納税者をの負担を減らす制度があります。基礎控除額は課税対象となる財産からある一定の金額を控除してから課税税率を決める現在の相続税制においてはとても重要な金額となります。
今回の改正で課税対象者が全国で2倍になると言われている要因がこの基礎控除の見直しにあると言われています。「8000万円が4800万円に!!」法定相続人3人(配偶者と子供2人を想定)がいたケースの控除額の変更額です。他の法定相続人のケースでも今回の改正で基礎控除の約4割が削減される事になりました。この基礎控除削減により相続税の申告対象者が全国で2倍に増えると見込まれております。
基礎控除の変更
〔改正前〕5,000万円+(1,000万円×法定相続人)
〔改正後〕3,000万円+(600万円×法定相続人)
相続税基礎控除
実際に基礎控除の金額を計算してみると解りやすかと思います。
例:父が死亡し、母と子供2人が法定相続人で、相続財産として不動産3,000万円と現預金2,000万円がある場合。(相続財産合計5,000万円)
改正前の基礎控除の計算方法
基礎控除の金額 5,000万円+1,000万円×3 = 8,000万円
相続財産5,000万円 < 基礎控除8,000万円 ⇒基礎控除が相続財産を上回るので相続税の納税なし 改正後(平成27年以降)の基礎控除の計算方法 基礎控除の金額 3,000万円+600万円×3 = 4,800万円 相続財産5,000万円 > 基礎控除4,800万円
⇒相続財産が基礎控除を上回るので相続税の納税が発生
どうでしょうか?皆さんも、財産の確認をしてみた方が良いのではないでしょうか?また、税率の引き上げも今回の改正でのポイントになります。相続税は相続する金額によって税率が上がる累進課税制度となっています。下記表をご確認してみて下さい。
相続税基礎控除
特に相続する金額が多い方は注意が必要です。

2.なぜ、相続税増税なのか?

まず、なぜ今回(平成27年1月1日の改正相続税法)相続税が増税されることになったのか、その背景と理由について確認をしてみたいと思います。「そもそもなぜ相続税が存在するのか」こんなことを考えたことがありますか?相続税の目的は大きく分けて2つあります。
(1)所得税の補完機能
 日本ではお金を稼ぐと所得に対して一定の割合で税金を納めることになります。その過程の中で、  税金が控除されたり軽減されたりする事がありますので、その分を亡くなった際に清算するのが相続税の1つめの存在理由でしょう。
(2)富の再分配と格差是正
 相続税がなければお金持ちはずっとお金持ちであり、社会的な階層のこう着を招いてしまう事にもなります。まるで江戸時代の将軍や大名の代替わりのようになってしまいます。所得税が累進課税制度を導入していのと同様に相続税も相続した財産が大きければ大きいほど税額が高くなります。これによって階層のこう着化を防ぐ事が出来、富の再分配を税金を使って行っているのです。
この2つの存在理由と今回の増税を重ねて考えてみたいと思います。実は今回の改正前の制度は1994年の改正から適用されていたもので比較的長い期間適用されていました。特にバブル期の1988年から1992年、1994年と短い期間で改正され今回と逆に基礎控除が増額され最終的には「5000万円+1000万円×法定相続人」という数式になってから20年になります。
ところで1988年から立て続けに控除額が増額されたかというと…バブル経済によって地価の高騰が巻き起こり土地を相続するとあっという間に基礎控除額の枠を超えてしまい相続税を支払うことになってしまったのです。高額な相続税を支払うために相続した土地や建物を売り、相続人の生活そのものが立ち行かなくなってしまうような事も起こるようになりました。
このような事態を防ぐために矢継ぎ早に基礎控除を拡大し高額な相続税がかからないようにしていたのです。その後はみなさんご存知の通りバブル経済は弾け、地価は軒並み下落しました。
相続税基礎控除
このグラフを見て頂いても解るように約20年間、地価は下落基調にあります。その間、基礎控除は
据え置かれており今では相続税課税該当者を全体の5%以下に押し下げる要因になっていました。
また、国の収入(主に税収)も地価の下落同様、落ち込んでおり更にこれから本格的に迎える少子高齢化社会において社会保障費は増加し続けています。
相続税収の推移
相続税基礎控除
国も先んじて消費税やたばこ税などの増税策を打ち出していましたがついに相続税の増税に踏み込む事になったのです。これからの我が国が迎える人口減少、少子高齢化社会に対処するには避けては通れない「増税」というキーワードをどう上手に付き合うのかが大切なポイントになって来ました。

3.ここがポイント「相続税対策」

ひとことで「相続税対策」といっても様々な対策があります。まずは、どのような事が心配かしっかりと整理する事が大事になります。
(1)節税対策
と、その前に自分たちが相続税納税義務者かどうかしっかりと確認する事も必要な作業と思って下さい。ケースによっては節税対策よりも先に別の対策が必要になるケースもあります。本題に戻りますが節税対策として有効なのは下記のようなものが上げられます。

  • 生前贈与
  • 教育資金一括贈与の非課税
  • 財産評価引き下げによる対策

どれが有効かはお持ちの財産や家族状況によって変わって来ますのでしっかりと見極める事が大切です。先述したように基礎控除額が減額されていますので課税対象になる方が増えていますので改めて資産を確認する事も大切になります。是非、この機会に確認をしてみましょう。確認の仕方が解らない方は専門家に問い合わせる事をおすすめします。
(2)遺産分割対策
相続税は発生後、10か月以内に申告をしないと下記のような問題が発生してしまいます。

  • 小規模宅地等の評価減の適用が使えなくなる
  • 配偶者の税額軽減が使えない。(法定相続分2分の1、または1億6000万円の控除)
  • 親の財産の分割・名義変更が使えない。自分の資産を売却したり預貯金で納税しないといけなくなってしまう

このようなせっかくある優遇を使う事が出来なくなってしまうので分割対策を打つ事が大切になります。具体的な策として有効なのが遺言書の用意。遺言書にはいくつか種類がありますのでメリット・デメリットをしっかりと理解し用意する事が大切です。
(3)納税資金対策
これは相続人が相続税の納税資金の為に自分の資産や相続資産を売却する事になりその後の生活に影響が出る事を防ぐ対策になります。具体的な対策として生命保険加入があります。生命保険は受取人を指定する事が出来、財産の分割としても有効で更に控除も出来ますので上手に活用したい仕組みです。
また、別のコラムでも特集しておりますのでそちらを是非、ご高覧下さい。生命保険はそれ自身に控除枠もありますので上手に活用したいものです。節税対策同様、どれが有効かはお持ちの財産や家族状況によって変わって来ますのでしっかりと見極める事が大切です。

4.まとめ

相続税増税に対し上手に対応するためには次の5つがポイントになります

  • 常に最新の知識・情報を収集する
  • 生前贈与などの補完的制度を活用し相続財産を減らしていく
  • 不動産や生命保険を活用し資産を圧縮する
  • 相続争いを回避するために遺言書の作成や保険金受取人の設定を考える
  • 1つの対策に偏りすぎないこと。効果以上に弊害が生じることになります

執筆:久保田正広

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