2015.5.23

贈与税と住宅資金の気になる関係~賢い生前贈与の3つのポイント~

贈与税と住宅資金の気になる関係~賢い生前贈与の3つのポイント~

「贈与税」と「住宅」。これから住宅を購入しようと考えている方には気になるキーワードかもしれません。ところが、この二つは財産を残す側にとっても実に魅力的な組合せなのです。贈与税と住宅資金から賢い生前贈与のポイントを探ってみましょう。

1.相続税と贈与税の関係

(1)相続税増税がやってきた!
消費税と並び、大増税時代の象徴とも言える相続税の増税がいよいよやってきました。2015年1月1日以降に発生した相続に関しては、新しい税制が適用されることになります。これまで考えてきた相続税対策では歯が立たず、頭を悩ましている方も多いはず。まずは改めてその内容を確認してみましょう。
今回の制度改定は「控除額の縮小」と「税率の引き上げ」の大きく二つに分かれます。控除額に関してはこれまで「基礎控除5000万円+1000万円×法定相続人数」だったものが、全体が4割減となり「基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数」となります。妻と子供二人が相続人となるケースで考えると、基礎控除が8000万円から4800万円に大幅に下がることになります。
今回の改定によりこれまで20人に1人と言われていた相続税の課税対象が12人に1人まで上がるのではという試算がされています。特に地価の高い都市部ではさらに高い割合になると言われています。
さらには税率の引き上げも行われます。これまでは最高50%(3億円超)だった税率が55%(6億円超)となります。6億円超に関しては評価額の半分以上が税金で持っていかれることになります。ますます相続税対策が必要とされる時代になってきたのは間違いありません。
(2)そもそも贈与税とは?
突然ですが、皆さんは日本で一番高い税金はなんだかご存じでしょうか?答は上に書いてありますね(笑)、そうです、「贈与税」です。
現行の最高税率は50%と相続税と同じですが、実は贈与税では1000万円超が50%の対象となります。相続税の3億円とはずいぶん違いますよね。最高税率は同じでも、金額で考えると実際は贈与税の方がかなり高い計算となります。
また、あまり話題になっていませんが、贈与税も相続税と同じ2015年1月1日のタイミングで税率が引き上げられました。こちらは少し複雑で、直系尊属(祖父母や祖母)から贈与を受ける場合とそうでない場合で税率が変わってくるのですが、前者の場合は4500万円超、後者の場合は3000万円超が最高税率の55%の対象となります。どちらにしても相続税の6億円超とはずいぶん違います。
では、なぜ贈与税はこれほど高いのでしょうか。その答を導き出すには贈与税のそもそもの成り立ちを考える必要があります。
簡単に言ってしまえば、贈与税は相続税を補完するシステムだからです。想像してみてください。もし贈与税が相続税より安かったらどうなるでしょう。みんなどんどん生前贈与を行って相続税を減らそうとしますよね。その方が子供に多くの財産を残せるわけですから当然です。
言い方を変えれば、相続税逃れを防ぐために考えられたのが贈与税ということになるでしょう。今回相続税と同じタイミングで改定されるのは決して偶然ではありません。この不当とも思える贈与税の高さは、相続税と併せて考えないと理解できないかもしれません。
(3)賢い生前贈与の方法
このように贈与税とは基本的には相続税逃れができないような仕組みになっています。成り立ちを考えたら当然かもしれません。相続税対策と聞くと真っ先に生前贈与を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。確かに生前贈与も有効な対策ではありますが、上手に行わないと相続税以上に高い贈与税を払うはめになってしまいます。
そこで活用したいのが、国が設けているいくつかの特例です。税金を徴収することだけを考えれば特例など設けない方が良いかもしれませんが、あまりに税金優先で考えると日本経済に悪い影響を与えるような局面を生み出しかねません。“国の借金”という十字架を背負っている日本政府が常に抱えているジレンマです。
伝統的に日本政府は国民の住宅取得を後押しする傾向があります。「住宅」という人生で一番大きな買い物を促進することで、日本経済を活性化させる狙いがあるからです。住宅だけでも大きな買い物ですが、住宅を買えばカーテンなどの付随設備の購入や家電製品の買い替えも行われることが多いですから、大きな経済効果が期待できます。
税制上の特例とは「税金徴収」と「日本経済の活性化」の言わば“狭間”で生まれた産物ですが、住宅に関する特例が多いのはそうした政府の思惑があるからです。そしてその特例なかでも、特に効果が高いものの一つが「住宅取得等資金の非課税制度」です。

2.住宅取得等資金の非課税制度

(1)相続税対策の三原則
「住宅取得等資金の非課税制度」を詳しくご説明する前に、相続税対策をおさらいしておきましょう。相続税を節税するためには、三つのポイントがあります。その三つとは、即ち「生前贈与」「評価額の引き下げ」「特例の活用」です。
このうち「生前贈与」は相続が発生する前に相続人に対して資産を贈与することによって、相続税の課税対象となる資産を減らす方法です。有効な手段です が、前述の通り上手に行わないと相続税より怖い贈与税の餌食となります。
「評価額の引き下げ」とは、資産に工夫を加えることで相続税の計算の元となる課税評価額を引き下げる方法。例えば、更地にアパートを建てて「貸家建付地」とすることで評価額を下げる方法は広く知られています。
最後の「特例の活用」は先ほど触れた税金徴収と日本経済の活性化の狭間の産物です。有効に使えば威力を発揮しますが、期限等が区切られているものが多いのが難しいところ。例えば、平成25年に始まった「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」は、孫に教育資金を非課税で贈与できる特例ですが、3年間のみの期間限定となっています。こうした特例を見逃さないようにするためには、常に情報にアンテナを張っておく必要があります。
(2)制度の概要
「住宅取得等資金の非課税制度」に話を戻しましょう。
上に挙げた三つのポイントに沿って言えば、この制度は「特例を活用」して「生前贈与」を行う方法。上手く使えば大きな効果を得ることができます。
具体的に内容を見てみましょう。
国税庁のホームページよると「父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築若しくは取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たす時は、決められた非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります」とあります。
…………、よく分かりませんね(笑)。
ごくごく簡単に言えば、「家を買う時に購入資金を親から援助してもらったら、決まった金額まで非課税にしますよ」という制度です。
例えば、若いご夫婦が新居を購入する時にそれぞれの親からお金をちょっと出してもらうというのはよくある話です。そのお金を条件付きで高い贈与税の対象から外してくれるわけですから、これはなかなかおいしい特例です。
(3)特例のための条件
この特例を受けるためにはいくつかの条件があります。項目ごとにその条件を見てみましょう。
まずは「受贈者」、お金をもらう側の人には、以下のような条件があります。
①贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
②贈与者(お金をあげる人)の直系卑属(子や孫)であること。
③平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に贈与を受けること。
④贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
⑤贈与を受けた翌年の3月15日までに住居を取得し、そこに居住すること。
⑥過去3年以内に同じ制度の適用を受けていないこと。
(つまり3年に一度しかこの制度は使えません)
次は、建築あるいは購入する物件の条件です。
①登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
②中古住宅の場合は、以下のいずれかに該当すること。
 ・取得日から20年以内(耐火建造物の場合は25年以内)に建築されたものであること。
 ・耐震基準(耐震等級1相当以上)に適合し、証明書が発行されたものであること。
③親族などの特別な関係に人からの取得ではないこと。
もし、あなたが家の購入を考えている方であれば、一つ一つご自分に当てはめてみてください。通常のケースであれば、かなりの確率であてはまる条件だと思います。
(4)気になる非課税の額は?
気になる非課税の額ですが、これは贈与を受ける年と購入する物件によって変わってきます。平成26年の場合、通常の物件であれば上限が「500万円」、断熱性能や耐震性能等が一定の基準をクリアした省エネ住宅であれば「1000万円」となっています。
平成27年以降も制度として継続することは既に決まっていますが、現時点では非課税となる金額の上限は未定。但し、消費税増税との関係もあり、国内の景気を停滞させないためにもこちらの制度は緩和の方向に向かい、非課税枠が拡充されるのではないかと見方が強まっています。
(5)注意点はココ!
さて、こんな魅力的な制度にも注意点があります。
制度の恩恵を受けるためにも、以下の点はしっかり押さえておきましょう。
①贈与税申告期間内(贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日)の申告が必要。
②非課税の限度額は受贈者(お金をもらう人)でカウント。つまり、両親からそれぞれ限度額いっぱいもらうことはできない。逆に言えば、購入物件は一つでも、夫婦がそれぞれの親からもらう資金に適用することは可能。
③繰上返済用の資金には適用できない。
④暦年課税(毎年110万円の基礎控除)や相続時精算課税(特別控除2500万円)と併用は可能。但し、暦年課税と相続時精算課税のどちらか一方を選択する。
⑤贈与を受けた翌年の3月15日までに新居に居住する必要があるので、建築する場合はスケジュールに注意が必要。

3.この制度による3つのメリット

(1)節税効果
実際のところ、この制度を使うとどんなメリットがあるのでしょうか。
まずは、なんといっても大きいのが節税効果です。贈与税の軽減ではなく、「非課税」ですから、その効果は絶大です。
数字で見てみましょう。例えば、両親から500万円の贈与を受けた場合、平成27年度以降の税率で計算すると贈与税額は(500万円-基礎控除110万円)×20%-控除額30万円=48万円となります。500万円もらったとしても、手元に残るのは452万円ということになります。これが住宅取得用資金となれば500万円がそのまま手元に残る訳ですから、使わない手はありません。
(2)資産の遺し方
二つ目のメリットは、親が子に資産を残す時にその形を指定できるという点です。子供に生前贈与を行う時に親御さんがよく口にされる心配があります。
「お金を渡すことは子供のためにならないのでは?」
「大きなお金を持つと、気持ちが緩んで無駄遣いしてしまうのでは?」
「慣れない運用に挑戦して失敗するのでは?」
なるほど、ごもっともなご心配です。そんな時、この制度を活用することで「住宅」という決まった形で資産を引き継ぐことが可能です。住宅であれば無駄遣いする心配も運用に失敗する心配もありません。未来に形が残る資産として次世代に渡すことができます。資産を渡す側として安心感を得られるのも、この制度の大きな特長です。
(3)家族の未来
一歩進めて考えると、その先には家族の未来の形が見えてくるかもしれません。
例えば、適用を受けるためには条件がありますが、この特例を使って贈与した資金で二世帯住宅を建てるという選択肢もあります。
毎日お孫さんの顔を見ながらの生活はまさにプライスレス! もしかしたら、贈与する側の親御さんにとっては資産を非課税で渡せること以上の価値があるかもしれません。
さらに、二世帯住宅にすることによって相続税が節税できる可能性もあります。こちらも条件がありますが、「小規模宅地の特例」を適用できるケースもあり、そうなれば土地の相続税評価額を大幅に引き下げることができます。
先ほど、相続税対策の三原則のところで、この「住宅取得等資金の非課税制度」は、「特例を活用」して「生前贈与」を行う方法と書きました。実は小規模宅地の特例を使うことで、ここにに「評価額の引き下げ」という要素を加えることができ、三原則の全てを活用することができるのです。その意味でも、非常にメリットが大きい制度と言えるでしょう。

~まとめ~

いかがだったでしょうか。
「贈与税」と「住宅」という観点から、生前贈与を賢く行う3つのポイント、さらには「住宅取得等資金の非課税制度」の特長を見てきました。
繰り返しになりますが、この「住宅取得等資金の非課税制度」はなにも節税だけに効果があるわけではありません。資産の引き継ぎという点でも大きな意味のある特例です。「相続対策」と聞くと真っ先に「節税」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、相続対策で一番大事なのは実は節税ではありません。
相続対策で大事なのは、まずはスムーズな「遺産分割」、その次が「納税資金準備」、そしてようやく3番目に「節税」が出てきます。前の二つができなくて「相続」が「争族」となるようではいくら上手に節税できたとしても意味がありません。その重要な「遺産分割」と「納税資金準備」については、また機会を改めてお話させていただきたいと思います。

執筆:久保田正広

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