2015.5.23

生命保険料控除を上手に使って資産形成

生命保険料控除を上手に使って資産形成

生命保険料控除は契約者のみが受けられる権利。仕組みがわかれば、具体的にいくら得になるのかわかります。また加入形態ひとつで、定期預金、積立定期のような貯蓄性金融商品より高い運用効果も得られます。ここではソツなくトクするポイントをお伝えします。
生命保険料控除は生命保険に加入している契約者の大きな権利の一つです。納税者が加入している生命保険の種類に応じて一定額の所得控除を受けることができます。たとえば、生命保険料控除される額が年間4万円で自己の所得税率が20%だとすると、実質8,000円の所得税がかからずに済むということです。
一定額の所得控除を受けられるので年に一度申請をしておくだけで受けられる制度ですから、忘れずに行いましょう。

1.生命保険料控除を資産形成に活かす

(1)生命保険料控除の制度を使って資産形成を上手に行う
 そもそも資産形成をする際に選ぶ金融商品の一つとして「生命保険」という選択肢があることはご存知でしょうか。定期預金、積立預金、投資信託、株式投資、純金積み立てなど資産形成する金融商品は多々ありますが、貯蓄型の「生命保険」も金融商品として活用できます。
生命保険料控除となる生命保険の分類には「一般生命保険」と「介護医療保険」と「個人年金保険」の3つに分かれます。例えば、それぞれの分類の生命保険に加入していた場合、年間の生命保険料控除額は所得税控除が上限12万円となります。控除額は12万円ですが、年収500万円の方の所得税率は20%となりますので、12万円の20%の24,000円得をすることになります。
 また、毎月の保険料をそれぞれ1万円ずつ加入していた場合、年間の保険料は36万円となります。36万円に対して24,000円得することになりますので、年6.6%の運用ができていることになります。この保険に20年加入すると合計で48万円も利益が出ることになり、夫婦で利用すればさらに2倍になります。ちなみにこれは所得税控除のみの話です。
これに住民税の控除も入れるとさらに得するということになります。これは定期預金や投資信託にはないメリットと言えるでしょう。こうした制度を使って上手に賢い資産形成としていきましょう。
 以下には税制面や制度面において定期預金や投資信託で行う資産形成よりも、生命保険がすぐれている点についてまとめておきます。
①課税の繰り延べ
定期預金では利息がありますが、その際に利息に際して課税がされています。株式や投資信託においても運用益や配当に対しては課税されています。
しかしながら、生命保険で貯蓄している場合、解約返戻金として受け取るときのみに「所属税(一時所得)」として課税されるため毎年の課税がなく、解約返戻金として受け取るときに初めて課税されます(課税の繰り延べ)。そのため、保険の運用においては非課税のまま「複利」で運用されることになりますので、より投資効果が高くなっています。
②資産形成をしながら「保障」がつく
あたりまえなことなのですが、保険を使って資産形成をしますので病気や死亡した時には「保障」がついてきます。これも大きな利点と言えるでしょう。
③受取時は「一時所得」扱い
養老保険で満期を迎えたときや貯蓄型の生命保険を解約して解約返戻金を受け取るときには「一時所得」扱いとなります。払った保険料以上に受け取り額が多い場合は、さらにそこから50万円の控除が効きます。その50万円の控除をさし引いてもまだ受け取り額が多い場合は、その額の1/2に対して課税の対象となります。
多くの場合、満期保険金を受け取る頃には年金生活者になっているので、所得税が10%未満となる場合が多いため、さらにメリットが多くなる可能性があります。
(2)生命保険料控除の適用を受けるための手続き方法
具体的に生命保険料控除の適用を受けるための手続き方法について触れておきます。自営・自由業の方は毎年確定申告する必要があります。会社員の場合は会社の方から年末調整の時期に渡される「給与所得者の保険料控除等申告書」に記入し、毎年10月ごろに保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」と一緒に提出しましょう。基本的な手続はこれで完了です。
保険料を会社の給与より天引きしている場合は、「生命保険料控除証明書」は提出する必要はありません。その年にうっかり控除の申請をし忘れてしまった人も、翌年に確定申告すれば控除を受けられます。

2.生命保険料控除、旧制度と新制度の違い

平成22年度にこの生命保険料控除の制度が改正されました。この改正は平成24年度の所得税から適応になります。実際、どのような仕組みに変更されたかはご存知でしょうか?平成22年度の改正に伴いよりメリットを受けることができる方も多いようです。ここではまず、現制度の概要を述べた後、旧制度と新制度の仕組みの違いを見ていきましょう。
(1)制度の概要


所得税

住民税

一般生命保険料控除

4万円

2.8万円

介護医療保険料控除

4万円

2.8万円

個人年金保険料控除

4万円

2.8万円

全体の所得控除限度額

12万円

7万円


平成22年度にこの生命保険料控除の制度が改正されました。この改正は平成24年度の所得税から適応になります。実際、どのような仕組みに変更されたかはご存知でしょうか?平成22年度の改正に伴いよりメリットを受けることができる方も多いようです。ここではまず、現制度の概要を述べた後、旧制度と新制度の仕組みの違いを見ていきましょう。
(2)旧制度からの改正点
①介護医療保険料控除の新設
 平成24年1月1日以降に締結した生命保険契約のうち、「介護医療保険契約等」の対象となる保険料等について、控除適用限度額として所得税4万円、個人住民税2.8万円が新たに設けられます。(ただし、保険名に「介護」「医療」と書いてあってもこの控除の対象とならないものがあるので注意)
②一般生命保険料控除、個人年金保険料控除の適用限度額の変更
 平成24年1月1日以降に締結した生命保険契約のうち、「一般生命保険契約」「個人年金保険契約」の対象となる保険料について、それぞれ控除適用限度額として住民税4万円、個人住民税2.8万円に変更になります。
③適用限度額の制度全体の変更
 平成23年1月1日以降に締結した生命保険契約のうち、「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」「介護医療保険料控除」を合わせた全体の適応限度額が、所得税の場合には12万円となります。個人住民税は限度額7万円のまま変更はありません。
旧制度との違いを表にすると下記のとおりになります。


旧制度

新制度

一般生命保険料控除

所得税5万円、住民税3.5万円

所得税4万円、住民税2.8万円

介護医療保険料控除

所得税4万円、住民税2.8万円

個人年金保険料控除

所得税5万円、住民税3.5万円

所得税4万円、住民税2.8万円

全体の所得控除限度額

所得税10万円、住民税7万円

所得税12万円、住民税7万円


※平成23年12月31日以前に締結した生命保険契約にかかわる控除は、平成24年1月1日以降も旧制度が適用されます。
(3)控除額の具体的な計算方法
 上記のように改正された生命保険料控除ですが、具体的に自分自身が加入している保険の生命保険料控除額の額がいくらになるかについての計算方法を理解しておきましょう。
①所得税の生命保険料控除額<新制度>
(一般型・年金型・介護医療型それぞれに適用されます)


年間の支払保険料

控除額

20,000円以下 支払保険料の全額
20,000円超 40,000円以下 支払保険料×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払保険料×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円


※一般型・年金型・介護医療型を合わせて120,000円が限度となります。
②住民税の生命保険料控除額<新制度>
(一般型・年金型・介護医療型それぞれに適応されます)


年間の支払保険料

控除額

12,000円以下 支払保険料の全額
12,000円超 32,000円以下 支払保険料×1/2+6,000円
32,000円超 56,000円以下 支払保険料×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円


※一般型・年金型・介護医療あわせて70,000円が限度額となります。
 注意点として、新制度下においては「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料は」の個人住民税控除額はそれぞれ2.8万円ですが、合計した場合は7万円が限度額になります。
 また、新旧両制度を適応される場合は、一般生命保険・個人年金等の保険料に係る控除額は合計で所得税は4万円、個人住民税は2.8万円が上限となります。

3.具体的な事例で控除額を計算してみましょう

(1)控除額を計算しよう
① 具体的事例
 実際に具体的事例をあげて、所得税と個人住民税の生命保険料控除額を計算してみましょう。
 現在、平成20年4月に加入した個人年金保険の保険料は毎月10,000円です。平成25年9月に今後新たに医療保険と生命保険(終身保険)に加入しました。医療保険の保険料は月々3,000円、生命保険の保険料は月々25,000円です。
◆このケースの所得税生命保険料控除額
 この方の場合は新旧両方の制度を適用することになります。旧制度の活用として個人年金保険の個人年金保険の年間支払保険料が12万円となりますので、控除額は4万円(新旧両方を適応する場合は、所得税控除額の上限は4万円になるため)。
・個人年金保険の生命保険料控除枠40,000円
 新制度を利用する医療保険と生命保険(終身保険)の生命保険料控除は、平成25年9月に保険料の支払いが始まりその年の12月末までが対象になります。よって、医療保険の平成25年の支払保険料は3,000円×4か月=12,000円、生命保険(終身保険)は25,000円×4か月=100,000円になります。
 よって、それぞれの生命保険料控除額は医療保険が支払保険料が20,000円以下なので全額の12,000円、生命保険(終身保険)支払保険料が80,000円超となりますので40,000円ということになります。
・介護医療保険の生命保険料控除額12,000円
・一般生命保険料の生命保険控除額40,000円
 このケースの場合の生命保険料控除額の合計は92,000円ということになるので、上限が合わせて12万円ですから、そのまま92,000円が生命保険料控除額となります。
 
◆このケースの個人住民税生命保険料控除額
 個人住民税の場合も新旧両方の制度を適用することになります。旧制度の活用として個人年金保険の個人年金保険の年間支払保険料が12万円となりますので、控除額は2.8万円(新旧両方を適応する場合は、所得税控除額の上限は2.8万円になるため)。
・個人年金保険の生命保険料控除枠28,000円
 新制度を利用する医療保険と生命保険(終身保険)の個人住民税の生命保険料控除は、平成25年9月に保険料の支払いが始まりその年の12月末までが対象になります。よって、医療保険の平成25年の支払保険料は3,000円×4か月=12,000円、生命保険(終身保険)は25,000円×4か月=100,000円になります。
 よって、それぞれの生命保険料控除額は医療保険が12,000円以下なので全額の12,000円、生命保険(終身保険)支払保険料が56,000円超となりますので28,000円ということになります。
・介護医療保険の生命保険料控除額12,000円
・一般生命保険料の生命保険控除額28,000円
 このケースの場合の生命保険料控除額の合計は68,000円ということになるので、上限が合わせて7万円ですから、そのまま68,000円が生命保険料控除額となります。
(2) 具体的事例2
 平成15年7月から定期保険特約付き終身保険に加入しており、保険料は月々15,000円で旧制度の「一般生命保険控除」(所得税額で50,000円の控除)を受けています。
 平成25年度7月に更新となり、「定期保険特約部分」と「医療保険関係特約部分」が変更になりました。更新後の保険料は23,000円となり、そのうち6,000円は介護医療関係特約の保険料となります。
◆このケースの所得税生命保険料控除額
 この方の場合は平成25年度6月分までは旧制度を適用することになります。旧制度の活用として一般年金保険の保険料が6カ月間で支払保険料が9万円となりますので、控除額は、9,000円×1/4+25,000円=47,500円となります。
(ア)旧制度の一般生命保険料控除枠47,500円(平成25年6月まで)
 平成25年7月より新制度が適応されます。7月からの6カ月間の支払保険料は、138,000円となります。そのうち、介護医療保険部分は36,000円、一般生命保険料部分は102,000円となります。
 よって、それぞれの生命保険料控除額は介護医療保険が支払保険料36,000円なので36,000円×1/2+10,000円=28,000円、一般生命保険(終身保険)支払保険料が80,000円超となりますので40,000円ということになります。
(イ)新制度の介護医療保険部分の生命保険料控除額28,000円
(ウ)新制度の一般生命保険料の生命保険控除額40,000円
(平成25年9月から12月末まで)
 上記で計算した控除額を分類ごとに整理します。
・一般生命保険料控除額(ア)47,500円(ウ)40000円
・介護医療保険料控除額(イ)28,000円
一般生命保険料控除は新旧両方を利用する場合は4万円が限度額となりますが、(ア)の旧制度の控除額と比較して大きい金額を控除額とするので、47,500円が対象になります。
・一般生命保険料控除額47,500円
介護医療保険料控除額は28,000円で限度額40,000円以内に収まっているのでそのまま28,000円です。よってこの方の所得税の生命保険料控除は75,500円となり、合計額が限度額内に収まっているのでそのまま控除額は75,500円となります。
 
◆このケースの個人住民税生命保険料控除額
 個人住民税も平成25年度6月分までは旧制度を適用することになります。旧制度の活用として一般年金保険の保険料が6カ月間で支払保険料が9万円となりますので、控除額は、70,000円超となりますので控除額は35,000円となります。
(ア)旧制度の一般生命保険料控除枠35,000円(平成25年6月まで)
 平成25年7月より新制度が適応されます。7月からの6カ月間の支払保険料は、138,000円となります。そのうち、介護医療保険部分は36,000円、一般生命保険料部分は102,000円となります。
 よって、それぞれの生命保険料控除額は介護医療保険が支払保険料36,000円なので36,000円×1/4+14,000円=23,000円、一般生命保険(終身保険)支払保険料が56,000円超となりますので28,000円ということになります。
(イ)新制度の介護医療保険部分の生命保険料控除額23,000円
(ウ)新制度の一般生命保険料の生命保険控除額28,000円
(平成25年9月から12月末まで)
 上記で計算した控除額を分類ごとに整理します。
・一般生命保険料控除額(ア)35,000円(ウ)28,000円
・介護医療保険料控除額(イ)23,000円
一般生命保険料控除は新旧両方を利用する場合は2.8万円が限度額となりますが、(ア)の旧制度の控除額と比較して大きい金額を控除額とするので、35,000円が対象になります。
・一般生命保険料控除額35,000円
介護医療保険料控除額は23,000円で限度額40,000円以内に収まっているのでそのまま23,000円です。よってこの方の個人住民税の生命保険料控除は58,000円となり、合計額が限度額70,000円内に収まっているのでそのまま控除額は58,000円となります。
 どうでしょうか。生命保険の分類や支払時期によって計算方法が変わりますのでよく理解していきましょう。

【補足】 生命保険の分類

ここでそれぞれの生命保険の分類において理解しておきましょう。「介護保障付終身保険」といった保険の場合、この保険は「介護医療分類」になるのか「一般生命保険分類」になるのかが、保険の名称だけではわからないことがあるからです。
①一般生命保険料
生存または死亡に基因して一定額の保険金、その他の給付金を支払うことを約束する部分に係る保険料。
②介護医療保険料
入院・通院等に伴う給付部分に係る保険料など。(介護保障付終身保険などは、介護と名称がついていても一般生命保険の分類になるので注意)
③個人年金保険料
個人年金保険料税制適格特約付の付加された個人年金保険等に係る保険料など。

執筆:久保田正広

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